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筋肉痛

久しぶりに運動をした翌朝、身体中が痛くて、階段を下りるのもつらい。皆さんも一度くらいはこのような経験があると思います。このように運動後しばらくしてから現れる筋肉痛を「遅発性筋肉痛(Delayed Onset Muscle Soreness:DOMS)」といいます。

秋になると、涼しくなって身体を動かす機会も増えてきます。普段あまり運動をしていない方が、久しぶりに登山やランニングをして、その翌日に「身体のあちこちが痛くて動けない」と訴えて外来を受診されることも少なくありません。また普段から運動を続けている人でも、いつもとは異なる運動や慣れていない動きをしたときには強い筋肉痛が起こることがあります。

DOMSが起こるのは、単に「筋肉を使ったから」という理由だけではありません。日頃から運動をしている人でも、いつもとは違う運動をしたり、運動の強度や時間を急に増やしたりすると、普段とは異なる負荷が筋肉に加わり、DOMSが起こることがあります。

なかでもDOMSと深く関係しているのが、筋肉が引き伸ばされながら力を発揮する「遠心性収縮」です。ジャンプからの着地で衝撃を受け止めるとき、ダッシュから減速するとき、登山で坂道を下るときなど、筋肉は伸ばされながらブレーキをかけるように力を発揮しています。このような動作を普段以上に繰り返すと、筋線維やその周囲の組織に大きな負荷が加わり、その後にDOMSが生じやすくなります。

一方、強い筋肉痛を経験した運動と同じような動作を再び行うと、前回ほど強い筋肉痛が起こらなくなります。これは「反復運動効果(repeated bout effect)」と呼ばれる現象で、一度経験した運動を身体がいわば「覚える」ことで、次に同じような負荷が加わったときの反応が小さくなるのです。この適応には、筋肉そのものだけでなく、その周囲の組織や運動をコントロールする神経系など、いくつもの仕組みが関係していると考えられています。

つまり、久しぶりに運動した翌日に身体中が痛くなるのは、その運動に身体が十分に慣れていないこととも関係しているのです。運動を継続すると身体はその負荷に少しずつ適応し、同じ運動をしても筋肉痛は起こりにくくなります。トレーニングによって身体が変化するということは、筋肉が太くなったり筋力が強くなったりすることだけではないのです。

また、DOMSには運動直後ではなく、数時間から翌日以降になって痛みが現れるという特徴があります。以前は、運動によって筋肉に乳酸がたまり、それが筋肉痛の原因になると考えられていましたが、現在ではその考え方は否定されています。運動後の筋肉では、炎症反応や神経の感受性を高める物質の増加など、さまざまな変化が起こり、痛みを感じる神経が刺激に対して徐々に敏感になっていきます。そのため、普段であれば痛みを感じない程度の刺激でも、筋肉を押したり、伸ばしたり、力を入れたりすると痛みを感じるようになります。

こうした変化にはある程度の時間がかかるため、運動直後ではなく、数時間から翌日以降になって痛みが現れると考えられています。DOMSは単に「筋肉が傷ついたから痛い」のではなく、運動後に筋肉の中で起こるさまざまな反応と、それに伴って痛みを感じる神経が徐々に敏感になっていくことが関係しているのです。

ところで、「年を取ると筋肉痛が翌々日に来る」とよくいわれます。確かに、若い頃は翌日に痛かったのに、年齢を重ねてからは翌々日に痛みが強くなったと感じる人もいるようです。しかし、加齢によってDOMSの発症そのものが遅くなることは、医学的には明らかになっていません。そもそもDOMSは運動直後に起こる痛みではなく、数時間後から現れ、24~72時間程度で強くなることが多く、その時間経過には個人差があります。

さらに、加齢によって痛みを感じる神経の働きや痛覚の閾値が変化することも知られています。年齢とともに筋肉痛そのものが遅れて発生するというよりも、こうした痛みの感じ方の変化によって、運動後に徐々に強くなる痛みを自覚するタイミングが変わり、「筋肉痛が遅れて来た」と感じている可能性もあります。

久しぶりにスポーツをするときには、いきなり強い運動をするのではなく、運動の時間や強度を少しずつ増やしていくことが大切です。身体がその運動に慣れる時間をつくりながら徐々に運動量を増やしていくことで、強い筋肉痛を起こしにくくすることができます。

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▶︎ こちらの記事は長野県のスポーツを応援するWEBマガジンSPOCOLOR(スポカラ)にて連載しているコラムを掲載しております。