足がつる
夏の暑い時期、試合の終盤で足がつって動けなくなる選手を見かけます。試合や高強度なトレーニングが終わりに近づいた頃、ふくらはぎが痙攣し、強い痛みに苦しんだ経験のある選手も少なくないと思います。足がつる現象は、いわゆる「こむら返り」のことですが、今回のコラムでは、なぜスポーツ活動の終盤に足がつるのか、その理由について説明したいと思います。
こむら返りは、医学的には自分の意思とは関係なく筋肉が過剰に収縮してしまう「筋痙攣」と呼ばれる状態です。このメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、現在では、神経と筋肉の疲労によって筋肉の収縮や伸張をコントロールする「反射」の働きが乱れ、筋肉を収縮させる神経が過剰に興奮することが主な原因と考えられています。
スポーツで跳んだり走ったり、ボールを投げたり蹴ったりする動作では、全身のさまざまな筋肉が活動しています。筋肉は関節を動かすために収縮や伸張を繰り返していますが、過剰な伸縮は筋肉や腱が切れてしまう危険性があります。そのため、筋肉が伸びすぎたり縮みすぎたりしないよう、筋肉の状態を素早く察知してくれる二つの重要なセンサーが存在しています。一つは筋紡錘と呼ばれ、筋肉が伸ばされすぎていることを感知するセンサー、もう一つはゴルジ腱器官(腱紡錘ともいいます)と呼ばれ、筋肉が強く収縮して腱が強く張っていることを感知するセンサーです(図)。

これらはそれぞれ筋肉と腱の中にあり、筋肉の状態を感知して神経を介してその情報を脊髄へ伝え、「脊髄反射」という機能によって筋肉の収縮と弛緩を素早く調節しています。膝を曲げた状態でお皿の骨の下を叩くとぴょんと膝が伸びる現象を経験したことがあると思います。これは、叩かれた刺激によって太ももの筋肉(大腿四頭筋)が瞬間的に引き伸ばされ、筋紡錘がそれを感知して反射的に大腿四頭筋をぎゅっと収縮させる反応で、「伸張反射」と呼ばれます。これは筋肉のセンサーが刺激を感知して、反射によって筋肉の動きを瞬時に調整している代表的な現象です。このような機能は常に無意識のうちに働いており、スポーツ活動中もこの二つのセンサーを介して、筋肉が適切に動くよう絶えず微調整されているのです。
しかし、筋肉が疲労すると、この二つのセンサーの働きが乱れ、反射によって筋肉をうまく緩めることができなくなります。すると筋肉は過剰に収縮したまま元に戻れなくなり、こむら返りが起こるのです。特にふくらはぎは膝と足関節の二つの関節を動かしながら、走る、跳ぶ、方向転換するといった動作で大きな負荷を繰り返し受けるため、疲労が蓄積しやすく、筋痙攣が起こりやすいのです。ちなみに、「こむら」とは古い日本語でふくらはぎを意味します。ふくらはぎの筋肉がひっくり返るような激しい痛みを表現した言葉だそうです。
それでは、こむら返りを予防するにはどうすればよいのでしょうか。最も重要なのは、筋力や筋持久力を高め、試合の終盤まで疲労に耐えられる身体をつくることです。日頃から試合を想定した強度の高いトレーニングを継続し、疲れにくい身体を作ることが予防につながります。また、大量の発汗による脱水やナトリウム不足はこむら返りのリスクを高めるため、暑い環境では計画的な水分・電解質の補給も重要です。日頃のトレーニングと試合当日の水分・ナトリウム補給を組み合わせることで、筋痙攣のリスクを減らすことができます。
今年のワールドカップはスペインが優勝しました。今大会では、試合終盤のアディショナルタイムや延長戦で劇的な決着を迎えた試合が数多くありました。本当に強いチームは、最後まで走り切り、戦い抜く力を持っています。試合終盤にこむら返りが起きては、最後の最後でパフォーマンスを発揮することができません。日頃から疲労に耐えられる身体をつくり、最後の一歩まで走り抜けられる準備をしておくことが、勝利への大きな一歩となるのです。
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