三次元動作解析
成長期のスポーツ選手に多い膝の痛みに「オスグッド病」があります。正式にはオスグッド・シュラッター病(Osgood-Schlatter disease)という病名で、膝のお皿の下にある脛骨粗面という部分に痛みや腫れが生じます。成長期ではここの骨がまだ十分に成熟しておらず、走る、跳ぶ、蹴るといった動作を繰り返すことで、大腿四頭筋の引っ張る力が膝蓋靭帯を介して脛骨粗面に繰り返し加わり、組織が耐えられる力を上回ると発症すると考えられています。(図1)
この病名は「オスグッド」先生と「シュラッター」先生という2人の外科医の名前からつけられています。1903年、アメリカの整形外科医Robert Bayley Osgoodと、スイスの外科医Carl Schlatterが、それぞれ成長期に生じる膝の病変を報告しました。面白いことに、この2人は全く別の国で、ほぼ同じ時期にこの疾患を報告したことから、両者の名前をとってOsgood-Schlatter病と呼ばれるようになりました。日本では現在「オスグッド病」と呼ばれることが多いのですが、かつてヨーロッパから医学が伝えられ、ドイツ医学の影響が強かった時代には「シュラッター病」という名称も広く使われていたようです。

矢印 脛骨粗面の隆起、不整像
成長期にみられるスポーツ障害には、オスグッド病だけでなく、腰椎分離症やシーバー病など様々な疾患があります。いずれもスポーツによる繰り返しの負荷が発症に関係しますが、同じ成長期に同じようにスポーツをしていても、なぜかスポーツ障害を発症する人と全く発症しない人がいます。その理由について、オスグッド病を例にあげて3つの要因を解説したいと思います。
1つ目は「骨と身体の成長」です。成長期の脛骨粗面はまだ完全な骨ではなく、膝蓋腱が付着する部分には未成熟な組織が残っています。成長期には手足など身体の遠位部から成長するため、下肢では下腿の成長が先行し、それに対してより身体の近くにある大腿四頭筋では、筋肉や腱の成長・柔軟性の変化に時間差が生じます。そのため、急速に伸びる骨に対して筋肉や腱が相対的に緊張した状態となり、そのタイミングで運動負荷が強くなると脛骨粗面の牽引負荷が大きくなり、痛みが生じます。成長のタイミングには個人差があるため、成長が完了して脛骨粗面が成熟すると、同じ運動負荷が加わっても痛みが生じることは少なくなります。
2つ目は「筋肉の柔軟性と筋力のバランス」です。大腿四頭筋の柔軟性が低下すると、膝を曲げたときに脛骨粗面を引っ張る力が強くなります。また、太ももの前側にある大腿四頭筋と、後ろ側にあるハムストリングは互いに協調して膝の動きをコントロールしています。これらの筋力や柔軟性のバランスが崩れると、運動時の動作で大腿四頭筋に頼りやすくなり、膝伸展機構への負担が増加してしまいます。
3つ目は「身体の使い方」です。走る、跳ぶ、着地する、急に止まるといった動作では、本来、股関節、膝関節、足関節を連動させることで身体にかかる力を吸収、分散しています。ところが、股関節を十分に曲げられない、臀部の筋肉をうまく使えない、足関節の動きが悪いなど運動連鎖が崩れると、股関節や足関節が担うはずの仕事まで膝で補うことになります。つまり「膝を使いすぎる動き」になり、大腿四頭筋の活動と膝伸展機構への負荷が増え、脛骨粗面への牽引力も大きくなると考えられます。
オスグッド病は、「成長期だから」とか「太ももの筋肉が硬いから」起こるものではなく、成長期特有の骨の未成熟さに、筋肉の状態や身体の使い方、スポーツによる反復負荷が重なって発症するのです。特定の部位に負担が集中する身体の使い方が、スポーツ障害の発症に関係しているものも少なくありません。痛みが出ている場所だけでなく、「なぜそこに負担が集中したのか」を考えることが、スポーツのケガを予防するうえで重要です。
当院では三次元動作解析装置を用いて、走る、跳ぶ、着地するといったスポーツ動作を分析し、体幹、股関節、膝関節、足関節がどのように連動しているのかを詳しく評価しています。(図2)

成長期のお子さんがスポーツ中に膝や腰、足などの痛みを繰り返している場合は、「成長期だから仕方がない」と考えず、ぜひ一度ご相談ください。
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▶︎ こちらの記事は長野県のスポーツを応援するWEBマガジンSPOCOLOR(スポカラ)にて連載しているコラムを掲載しております。