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お米屋さんと交番

スポーツ活動にケガはつきものです。足を捻ったり、強くぶつけて骨折したり、疲労や繰り返しの動作によって痛みが生じたり、予期せぬタイミングで様々なケガが起こりますね。
中には全くケガをしない強靭な身体の持ち主がいるかもしれませんが、どんな一流選手でも、競技人生のなかで一度はケガに苦しんだ時間があり、痛みに耐え、ケガを克服し、再び競技へ戻っていきます。

ケガをした際に行うべき治療として「RICE」という言葉があります。皆さんが毎日食べているごはんもライスですが、メシを食べていればケガなんてしない!なんて話ではありません。
RICEとは、Rest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字を並べた略語1)です。
ケガをしたら、患部を安静にして、氷で冷やし、圧迫しながら、できるだけ心臓よりも高い位置に置いておく。
ケガをすると、出血し炎症を起こします。炎症によって痛みが生じ、赤く腫れあがり、熱をもつようになりますが、このRICE処置によって炎症を最小限に抑えることができるのです。
RICE処置は、選手はもちろん、スポーツに関わるコーチやトレーナーには常識として長年用いられてきました。

図1 RICE処置

しかし最近では、ケガの治療はRICEではなく「POLICE」という言葉が用いられるようになっています。
POLICEとは、Rest(安静)をProtection(保護)、Optimal Loading(最適な負荷)、に置きかえた略語で、ケガの治療に大切なのは、患部を安静にするだけではなく、患部を保護しながら時期によって最適な負荷をかけるべきであるという考え方に変わってきたのです2)
ケガによって傷んだ組織は、安静にして全く動かさないよりも、時期に応じてある程度の負荷をかけることで組織の修復が促進されることが科学的に証明されています3)
患部を安静にすればケガが早く治ると長く信じられていましたが、傷んだ部分をいつまでも安静にしているだけでは治りが遅くなり、かえって悪影響を及ぼします。
例えば、スポーツ活動で足首を捻挫したとします。捻挫をすると徐々に足首が赤く腫れあがり、痛みによって動かすことができません。受傷直後~3日くらいが炎症のピークになるので、その時期は患部を「安静にして動かさない」=「最適な負荷」となります。
しかし、その後も漫然と安静や固定を続けていると、逆に靭帯や関節包の修復は進みにくくなります。また、周囲の組織や腱が癒着して正常に機能しなくなるため、関節が硬くなり、長く安静を続けたことでいつまでも痛みが残ってしまうこともあるのです。
捻挫した部分は炎症のピークが過ぎると自然に修復、回復へと向かうので、圧迫や挙上を続けながら腫れや痛みを抑え、少しずつ足指の運動や痛みの範囲で荷重量を増やしていき(=最適な負荷)、軟部組織が安定する2週間後くらいから、さらに関節の可動域を広げて荷重負荷をあたえ(=最適な負荷)、正常な関節運動と歩行動作を獲得します。
3週間後からは運動を開始して、有酸素運動を行い患部の血流を促しながら(=最適な負荷)スポーツ活動への完全復帰を目指していきます。
ケガからの早期復帰には、患部に時期に応じて負荷をあたえることも大事なのです。

ただし、ケガの治療を受ける際には正しい診断を受けていることが大前提です。
そしてどのタイミングで、どの程度の負荷を与えるのが最適なのか、専門的な知識をもった医師や理学療法士、トレーナーと相談しながら治療を行っていくことが大切です。

図2 RICEとPOLICE

1)Mirkin, G. (2015, September). Why ice delays recovery. Dr Gabe Mirkin on Health. Retrieved from www.drmirkin.com/fitness/why-ice-delays-recovery.html.

2)Bleakley CM, Glasgow P, MacAuley DC. PRICE needs updating, should we call the POLICE? British Journal of Sports Medicine. 2012; 4(4):220-221.

3)Glasgow P, Phillips N, Bleakley C,Optimal loading: key variables and mechanisms ,Br J Sports Med 2015;49:278-279.

▶︎ こちらの記事は長野県のスポーツを応援するWEBマガジンSPOCOLOR(スポカラ)にて連載しているコラムを掲載しております。